公開履歴
せきが出ている男性

インフルエンザの治療薬として使われているのが抗インフルエンザ薬です。
インフルエンザにはA型とB型とC型がありますが、A型とB型に有効なのがノイラミニダーゼ阻害薬です。

インフルエンザウイルスが体内に入り込むと、ウイルスのRNAやたんぱく質を体内で合成し、体外から放出します。
体内に入り込むときと放出するときにヘマグルチニンとノイラミニダーゼの2つの糖タンパクの働きが必要です。
ノイラミニダーゼ阻害薬は、ノイラミニダーゼを阻害することで、ウイルスが増殖するのを抑制しています。
タミフルは、一番最初に発売が開始されたノイラミニダーゼ阻害薬です。
そして抗インフルエンザ薬の中で唯一の飲み薬です。

タミフルの効果

タミフルにはカプセルとドライシロップがあり、通常の治療には1日2回、5日間服用します。
タミフルを発症してから2日以内に服用すると、服用しない時と比べて1~2日早く熱が下がります。
早めに症状を軽くすることで、重症化することを予防できます。

インフルエンザの症状が出てから36時間以内にタミフルを服用したグループ122例と、プラセボ(偽薬)を服用したグループ130例を比較した報告によると、タミフルを服用したグループは症状が回復するまでに70時間かかりました。
それに対して、偽薬を服用したグループは93.3時間かかりました。
タミフルを服用したグループの方がおよそ24時間、つまり1日早く回復したことがわかります。

16歳以上の男女で38度以上の発熱があり、自覚症状のある人を対象としたデータも報告されています。
筋肉痛や関節痛はタミフル服用群では14.7時間で症状が回復したのに対し、偽薬群は25.5時間でした。
倦怠感はタミフル群は23.5時間に対し偽薬群は30.5時間です。
同様に頭痛は21.6時間と26.8時間、悪寒や発熱は11.1時間と24.4時間、鼻症状は40.7時間と56.0時間、のどの痛みは20.4時間と29.5時間、咳は50.0時間と63.5時間と、いずれもタミフルを飲んだ方が早く回復していました。

鼻症状や咳や悪寒・発熱では半日以上早く回復しています。
咳はタミフルを服用しても2日以上続くものの、発熱や悪寒が半日以内に楽になることが多いことがわかります。
幼少児でも、ドライシロップを服用したグループが回復するまでの時間が報告されています。
のどの痛みや咳などの症状がなくなって発熱が37.4度以下になるまでの平均時間は72.5時間です。
38度を超えていた発熱が37.4度以下になるまでの平均時間は35.3時間でした。

このように、タミフルを服用することで発熱などの症状を早く回復させる効果があることがわかります。
タミフルは、症状が良くなっても5日間きっちりと服用することが大切です。
途中で服用するのをやめてしまうと、タミフルに耐性を持ったインフルエンザウイルスが体内でできてしまいます。

また、インフルエンザウイルスが体内に入ると約24時間後に症状が出てきます。
この頃にはウイルスは活発に増殖を始めています。
ウイルスが体内に入ってから約72時間後にウイルスの増殖はピークに達します。
そのため、タミフルは感染後48時間以内に服用することが重要です。
48時間を過ぎると効果は期待できません。
「インフルエンザかな」と思う症状が出たら、仕事を切り上げて医療機関を受診しましょう。

タミフルの副作用

タミフルを製造発売後に行った調査では、4211例に対して90例で副作用が見られました。
2.1%の副作用出現率となります。
一般的な鎮痛剤の副作用がおよそ3~5%なので、それと比べると副作用は少ないと言っても良いでしょう。

下痢が4211例中22例の0.5%、悪心(吐き気)が12例の0.3%、腹痛が11例の0.3%と、消化器系の副作用がまれに見られます。
インフルエンザ自体でも下痢や嘔吐や腹痛などの消化器系の症状が出ることがあるので、副作用なのかインフルエンザの症状なのか専門医でも見わけが難しいこともあります。
特にB型インフルエンザでは、下痢や嘔吐や腹痛がしばしば見られます。
また、平成15年11月から平成16年4月までの期間に厚生労働省が行った調査では、腹痛の副作用が6.8%で下痢が5.5%となっていますが、多くは軽症で遅くても翌日には治るとのことです。

30歳代の女性が服用後1時間ごとに嘔吐がおきたという報告もありますが、翌日にはお粥が食べられたということなので、それほどひどい副作用はないと考えられます。
副作用で下痢や嘔吐を起こす場合は、服用後10分から数時間で起きることが多いです。
それ以外では、頭痛やめまいや不眠が0.1%、傾眠や感覚が鈍くなると言った副作用の報告が0.1%となっています。
これもインフルエンザそのものの症状なのか、副作用なのか、判断が難しいところです。

このように、タミフルの副作用には下痢や吐き気や腹痛などの消化器系の症状がまれに見られることがありますが、それほど強いものではなく、安全性の高い薬だと言えます。
気になるのが、異常行動でしょう。
突然走り出したり、ないものが見えたり、ベランダから飛び降りようとしたりといったことが以前に、ニュース報道番組や週刊誌などでも取り上げられました。
これらの報道や記事を読んで、怖くなった人も多いでしょう。

医師からタミフルを処方されても、怖くて子供に飲ませることができなかった、という人も少なからずいるようです。
はたして、異常行動はタミフルの副作用なのでしょうか。
厚生労働省では2006年から毎年、タミフルなどの抗インフルエンザ薬と異常行動に関する調査を行っています。
その調査報告から出された見解が、以下の通りです。

異常行動はタミフルの副作用といえるのか

2015年から2016年にかけてのインフルエンザシーズン中に起きた異常行動は、合計88人の報告がありました。
そのうちタミフルを服用していた患者さんは15人、タミフル以外の抗インフルエンザ薬を服用していた人は28人、抗インフルエンザ薬ではなくアセトアミノフェンという薬を服用していた人が34人、何も薬は飲まなかったという人が11人でした。
これらの調査などから、基本的にはタミフルなどの抗インフルエンザ薬が原因で異常行動が起きるのではない、と言うのが専門家の見解です。

高熱そのものでも、異常行動が起きています。
異常行動を起こしやすいのは10歳前後の小児で、女児よりも男児に多いことや、眠りから覚めた直後に多いこと、高熱が出た1日目や2日目までに異常行動が起きるケースが多いです。

現在では、タミフルは念のために10歳代の患者さんには原則的には使用控えることになっています。
また、どの抗インフルエンザウイルスを使う場合であっても、インフルエンザを発症してから2日間ほどの高熱が続いている間は、注意が必要です。
万が一の事故を防ぐために、未成年の患者さんは一人きりにしないようにと、注意が喚起されています。

自分のインフルエンザが回復したと思ったら子供が高熱を出して、これ以上仕事を休むのは気が引ける等の事情もあるかもしれません。
ヘルパーさんを頼むとか実家の親に来てもらうなど、何らかの方法を講じて高熱の未成年者を一人にしないように、慎重に見守ることが重要です。
できれば、自室に一人で寝かせておいて親はリビングで用事をしながら時々様子を見に行く、という感じではなく、リビングにお布団を敷いて目の届くところに寝かせるようにするのがベターです。
3階の部屋の窓から飛び降りたという症例もあります。

また、異常行動は小児だけではなく大人でも報告例がありました。
悪夢を見てうなされたり、夢と現実が混同して訳のわからない非現実的な話をしたり、イライラしたり、急に暴れ出してせん妄のようになるなどの症状が出ることがあります。
中には認知症を発症したのかと間違うケースもありますが、認知症の場合はゆっくりと症状が現れるので、これほどまで急激に症状が現れません。
大人でもインフルエンザになると、異常行動が現れることがある、ということを知っておくと良いでしょう。